2013年10月26日土曜日

「人の記憶」について

記憶の定着

人の記憶は、脳内の「海馬」と「大脳皮質」の中で、情報が詰め込まれた神経細胞の結びつきが強まって、強化されるといいます。しかし、そのメカニズムは最新の科学をもってしてもなお不明な点が多いのが現状です。
 ただはっきりしていることは「記憶の定着」という高度で複雑な作業が、実は睡眠中に行われているということです。睡眠時間を削り、徹夜すら厭わぬビジネスマンや受験生たち、彼らにとって就寝中は無駄な時間と思われがちです。しかし、脳神経外科専門医・北品川クリニックの築山節所長は言います。「これは大いなる間違いです。そもそも睡眠の目的の一つには、『日中、頭に人力された情報を整理し、記憶として定着させる』こと。瞼の向こうで眼球がせわしく動くレム睡眠時に脳は活発に活動して情報の整理を行っています」。
「昼間、得た情報の多くは、まず脳の中枢にある海馬という器官に入る。そこから大脳皮質のあちこちにある貯蔵庫に送られます。日中、バラバラに頭に入ってくる様々な情報は、眠っている間に、『仕事の情報』『勉強の情報』『遊びの情報』などといった目的のファイルに分類される。いわば寝ることで、パソコンが再起動され、雑多に貯まっていた情報が整理されて、空いたディスクに保存されるわけです。海馬は情報の図書館の入り口であり、そこから中に入った本は、睡眠中に書庫で整理される。こうして本棚に並べられたものが記憶として残る、というイメージで考えてもらっても結構です」(築山所長)。

 睡眠中に記憶が強化されるという学説は、様々な実験でも実証されています。「楽器の演奏やスポーツ、ゲームなど、技巧や運動機能に関わる記憶のことを、言葉や文章で表現できない『手続き記憶』と呼びます。こうした記憶のうちから、例えばテレビゲームや、タイピングを繰り返し行わせ、得点や速さを指標とする実験を行うと、当然、継続するほど被験者の腕は上がっていきますが、なにより面白いのは、睡眠を充分にとった後に、より上達したということです。

■睡眠と記憶の関係

人の記憶は「大脳皮質」(右図)に保存されていると考えられています。大脳皮質に新しい記憶が作られるときに重要なのが、脳の内部にある「海馬」という部位です。海馬には、視覚や嗅覚などの感覚情報が集められてきます。そして、大脳皮質への記憶の書込みを助けています。記憶の読み出しにも、一時的に(最大で数ヶ月)海馬は必要です。ただし、一定期間が過ぎれば、海馬の助けがなくても大脳皮質にある記憶を読み出せるようになります。

記憶にも種類がある

【エピソード記憶】
⇒個人の経験や出来事にもとづく記憶。新しい記憶は海馬がないと記憶できません。
【意味記憶】
⇒言葉の意味や数式、年号など、いわゆる知識とよばれる記憶。
【手続き記憶】
⇒特定のスポーツの技術や自転車の乗り方など、体の動かし方に関する記憶。この記憶は、海馬がなくても覚えられる。

睡眠と海馬の関係

5~18歳までの健康な子ども290人を対象に、MRIを使って脳の詳細な画像を撮影し、「海馬」の体積を調べました。平日の睡眠時間のデータをあわせて分析したところ、睡眠時間が長いほど海馬の体積は大きくなり、睡眠時間が長い子どもの海馬は1割程度大きくなっていました。
 本研究を行った東北大学東北メディカル・メガバンク機構の瀧靖之教授は、「アルツハイマー病やうつ病などでは海馬が小さくなることが知られており、海馬の大きさの違いは記憶や認知機能などにも影響する可能性がある。子どものころから十分な睡眠をとることが、生涯にわたって健康な脳を保つうえで重要であることを示しているのではないか」と話しています。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

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