2014年2月20日木曜日

「トランス脂肪酸」:無規制、表示義務なしの日本!

危険な「トランス脂肪酸」、なぜ日本では野放し?

2014.02.19 Business Journal(cyzo inc.)より


今、世界的にトランス脂肪酸の規制が広がっています
 米国政府のFDA(米食品医薬品局)は、昨年11月にトランス脂肪酸を含む硬化油を食品添加物(グラス物質)から外す決定をしました。デンマーク(2003年)、スイス(08年)、オーストリア(09年)では、100g当たり2g以上のトランス脂肪酸を含んだ油脂の国内流通を禁止。米国、カナダ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、韓国、香港、台湾、中国では、食品含有量表示を義務付けています(あの中国でさえも!)。

 このようにトランス脂肪酸の規制が世界的に広がっているのは、トランス脂肪酸が人の健康に有害であることが明らかになってきているからです。
 
 トランス脂肪酸は、心筋梗塞や狭心症のリスクを増加させ、肥満を発症させやすく、アレルギー疾患を増加させ、胎児の体重減少、流産、死産を生じさせる可能性があります。また、母乳を通じた乳児へのトランス脂肪酸の移行も研究等で確認されています。

 WHO(世界保健機関)も03年に、心臓血管系の健康増進のため、食事からのトランス脂肪酸の摂取を極めて低く抑えるべきであり、最大での一日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満とすることを勧告しているのです。さらにWHOは、09にはトランス脂肪酸の高摂取群を考慮すべきとして、1%未満というレベルの03年勧告の見直しを課題とし、規制強化を示唆しています。

●多くの食品に含有

では、トランス脂肪酸は、私たちの食生活にどのように入り込んでいるのでしょうか。

 問題にしているトランス脂肪酸は、工業的に植物油を脱臭のために高熱処理したり、水素を加えて「硬化油」に加工したりする過程で生成されます。どのような食品に含まれているのかというと、主に問題にされるのが、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、クリームなどです。

 マーガリンは、油脂含有量が80%以上で、バターの代わりに使われています。ファットスプレッドは、JAS規格ではマーガリン類とされていますが、油脂含有量は80%未満。マーガリンと同様な使われ方をしていますが、風味原料と呼ばれる果実、果実加工品、チョコレートの味を付けられているものもあります。

 ショートニングは、米国でラードの代用品として開発された食用油です。クッキーやビスケットなどの焼き菓子、パンに練り込んで使われるとともに、アイスクリームに添加したり、フライ用の揚げ油としても使われます。この結果、トランス脂肪酸を含有する食品は、マーガリン、ファットスプレッドだけでなく、ショートニングを練り込んで作られるクッキー、ビスケットなどの焼き菓子、パン製品、ケーキに広がっています。さらに揚げ油として使うことによってつくられるドーナッツ類、ポテトフライ、鳥の唐揚げなど各種揚げ物に広範囲に含有されることになるのです。

●政府は無規制で民間任せ、事業者の状況も把握せず

では、トランス脂肪酸に対する日本政府の対応はどうなっているのでしょうか。

 端的に言うと、無規制で民間任せという状態です。世界的に広がっている表示義務化も日本では行われていません。消費者庁は、11年2月21日に「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針について」を策定しましたが、それは表示の義務化ではなく、「食品事業者においては、トランス脂肪酸を含む栄養成分の表示が、消費者の食生活の改善に重要な役割を有することを認識しつつ、販売に供する食品の容器包装、ホームページ、新聞広告等により情報開示が行われることを期待する」といったもので、食品事業者に情報開示するかどうかを任せるというものなのです。さらに、消費者庁は、この指針に基づいて情報開示した事業者の状況をまったく掌握していないありさまです。

トランス脂肪酸のリスク評価については、12年3月に食品安全委員会が食品健康影響評価書を発表しました。その概要は、次のようなものです。

 「トランス脂肪酸の過剰摂取は、
・冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)を増加させる可能性が高い。
・肥満、アレルギー性疾患(ぜんそく、アレルギー性鼻炎等)について、関連が認められた。
・妊産婦・胎児への影響(胎児の体重減少、流産等)について報告されている。
 ただし、これらは平均的な日本人よりトランス脂肪酸の摂取量が多いケースの研究

 「日本人のトランス脂肪酸の摂取実態と健康影響。
・日本人の大多数はWHOの目標を下回っている。通常の食生活では、健康への影響は小さい。
・ただし、脂質に偏った食事をしている人は留意する必要あり。
・脂質は重要な栄養素。バランスの良い食事を心がけることが必要。
・食品事業者においては、食品中のトランス脂肪酸含有量は近年減少傾向にあるが、一部製品は高いものが見られることから、引き続きその低減につとめる必要がある。
・リスク管理機関においては、今後とも日本人の摂取量について注視し、知見の収集や適切な情報提供が必要

 要するに食品安全委員会は、日本人は通常の食生活をしていれば、トランス脂肪酸による健康への影響は小さいから、特段の政府による規制措置は必要がないとの判断です。

●世界的なトランス脂肪酸対策から立ち遅れ


 このような食品安全委員会の見解が、世界的なトランス脂肪酸の使用規制、表示義務化の流れから見ても、そのリスク評価のベクトルが消費者の健康保護の方向に向いているとはとてもいえませんし、世界的なトランス脂肪酸対策から立ち遅れているといえます。

 消費者は表示義務がない中で、一体どの食品にどの程度のトランス脂肪酸が含有されているかも知ることができない状況に置かれており、ましてや「脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要がある」としても、そのような人はトランス脂肪酸表示義務がない中で留意のしようがありません。

 また、使用規制がないために、食品事業者の中には前述のようにトランス脂肪酸が含まれているショートニングを平気で使っている事業者がいますし、市販のマーガリンの中でも、毎朝パンに塗るだけで平均摂取量の2倍近く取ってしまうほどトランス脂肪酸の含有量が高いものが流通しています。

 日本人の通常の食生活も絶えず変化をしており、外食産業、コンビニや冷凍加工食品への依存度が高くなりつつあります。当然、トランス脂肪酸にさらされる危険度は高くなりつつあるということです。

 日本においてもトランス脂肪酸の表示の義務化トランス脂肪酸の使用規制事業者任せにしないで法的規制を進めていくことが、先進国として当然の課題であるといえましょう。



いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

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