2015年5月13日水曜日

腸と脳のセロトニンの働き

小腸は脳の支配を受けない!?

 「小腸がん」という言葉はあまり聞きません。非常に稀な病気です。それに対して大腸がんは部位別がん死亡率の男性が3位、女性が1位と近年増加しています。

 小腸にがんが少ないのはなぜでしょう? 

 一つには発がん性物質の分解酵素が大腸よりも強く免疫細胞の働きが活発で、がん細胞を排除するためと考えられています。その仕組みは、小腸の粘膜には「バイエル板」というリンパ球細胞が密集している独自のリンパ節があり、このリンパ球が体に有害な物質を撃退し、体内に吸収させないようにしているのです。

 小腸にがんが少ないもう一つの理由は、小腸の神経細胞が脳の支配から独立しているからと考えられます。小腸には約一億個の神経細胞がありますが、それらは脳の神経細胞とほとんどつながっておらず、脳の支配を受けていないのです。胃、肝臓、腎臓などは腸から分かれた臓器で、小腸から指令を受けているのです。それに対して、大腸は脳と密接につながっています。そのために、小腸は脳のストレスの影響を受けにくいのに対して、大腸はストレスの影響を受けやすいのです。それが、大腸にはがんができやすいのに対して小腸にはがんができにくい理由ではないかと考えられます。

 小腸はときに、脳にも指令を出しています。たとえば、毒物などが入ってきたときには、脳の嘔吐中枢を刺激して吐かせようとするのです。

 アメリカの生理学者マイケル・D・ガーションは『セカンドブレイン~腸にも脳がある』という本を書いています。彼は、脳内に存在している「セロトニン」が腸内にも存在することを発見したのです。さらに、体内のセロトニンの95%が腸で作られていることをつきとめたのです。そこで、腸を「セカンドブレイン」と名付けたのです。彼はこの本の中で、「現在我々は腸に脳があることを知っています。とても信じられないことかもしれませんが、あの醜い腸は心臓よりずっと賢く、豊かな感情を持っているのです。脳や脊髄からの指令がなくとも反射を起こさせる内在性神経系を持っている臓器は腸だけです。‥‥頭蓋と腸の両方にそれぞれ別の感情を持つ脳を発達させたのです」と述べています。

 小腸は、脳とは別の系統で、体の動きをセロトニンをもってコントロールしているのです。免疫もその一つで、小腸の動きと密接にかかわっているのです。

■腸内のセロトニン、脳内のセロトニン

セロトニン (serotonin, 5-HT)は、トリプトファン(必須アミノ酸の一種)から生合成される神経伝達物質(ホルモン)です。体内に存在する約10mg程度のセロトニンのうち90%以上は消化器内にあり、これが「腸は第2の脳」といわれる理由の一つになっています。

 小腸の粘膜細胞内にあり、ぜん動運動に作用し、消化を助けて整腸作用があります。昨今急増している過敏性腸症候群(IBS:慢性的な下痢や便秘などを伴う腹痛が繰り返される疾患)の症状にもセロトニンが関連しているといわれています。

 体内の残り10%のセロトニンのうち、8%は血小板に収納され血液中を流れています。血液中のセロトニンには、血液を凝固させる止血作用や、血管の収縮作用などがあります。

人間の活動に大きな影響を与える脳内セロトニン

そして、ほとんどの病気の原因といわれる“ストレス”など人間の精神面に大きな影響を与えているのが、脳内の中枢神経に存在している残りの僅か2%の脳内セロトニンです。

 体内時計を調節したり、睡眠ホルモン・メラトニンの原料となったり、ドーパミンやノルアドレナリンの作用を制御して、気分や感情のコントロール、衝動行動や依存症の抑制をしたりしています。また、痛覚の抑制(鎮痛作用)、海馬における記憶力や学習効果にも影響を及ぼしています。咀嚼や呼吸といった反復運動の機能にも作用しています。

 脳内セロトニンは日常の些細なストレスによっても使われるため、ストレス社会といわれる現代においては、セロトニン量は不足気味で、セロトニン神経系の働きも鈍ります。うつ病などの精神疾患が増える原因でもあります。

脳内セロトニンの原料を食事で摂るのは難しい

脳内セロトニンを増やすために、原料のトリプトファンを多く含む食材を食べればいいと勧めている先生もいらっしゃいますが、実はそう簡単ではありません。トリプトファンの代謝は極めて多様であり、また複雑です。食事で摂ったトリプトファンがセロトニン経路に使われるのはごく一部で、しかも大部分が腸内のセロトニン合成に消費されます。

 また、食事で摂ったトリプトファンはなかなか脳内には入りません。トリプトファンは、血管から脳へと入る物質の関所「血液脳関門」の通過にあたり、他のアミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・チロシン・メチオニン)と共通の輸送体を使って脳内に入るため、高たんぱく食など他のアミノ酸が多い環境ではトリプトファンは脳内へほとんど入らず、脳内セロトニンの合成にはつながらないのです。

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【脳内のセロトニンを活性化させるには】 

PCやスマホの登場が
睡眠不足に追い討ちをかけている
基本は不規則な生活や睡眠不足などの生活習慣の改善です。セロトニンは太陽の出ている昼間に分泌されやすく、睡眠中や日が沈んでからは分泌が少なくなります。人間が本来持っている『昼間に活動し夜は寝る』という生活リズムが大切です。
 また、セロトニンにはリズミカルな運動によって活性化されるという特徴がありますから、歩行運動、食事の際の咀嚼、意識的な呼吸などを心がけましょう。

 康復医康復医学学会の研究素材「ラフマ」には、脳内セロトニンの分泌促進に影響するデータ、及び脳神経細胞膜の流動性に影響するデータがあります。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 村雨カレン

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